二週間ぶりに飼い犬達に会う飼い主　ゴールデンレトリバーのチャッピーとボーダーコリーのココ

3月18日に体調を崩した僕は緊急手術をしてそのまま入院となった。
心臓の手術なので万が一の可能性があります。と何かの書類にサインをさせられた。
人が死を迎える瞬間はあっけなく緊迫感が無いものかもしれない。とぼんやりとした頭で考えていた。

不思議と怖くなかったが、急に家に残してきた犬達と仕事中の奥さんが心配になり、はてさて困った事だとモニターに映る心臓の動きを落ち着かない目で追った。

リハビリが順調に進み二週間で退院になると、家の近所はフキノトウが採り放題になり、近くの公園の桜はピンクの蕾が今にも開きそうに大きくなっていた。まるで冬眠から覚めた熊の気分だ。

何日か家で犬と散歩をしながらゆっくりリハビリしていると、遂に公園の桜が咲きだし風が温まってきたのを感じて、いつもの山を見上げた。
まだ雪が残っている岩手山を近くで見たくなって、犬達を車に乗せ八幡平の焼き走りに向かってアクセルを踏んだ。

スノーシューで苦労して歩いた雪道もすっかりと溶けていて,熔岩流跡までの道路はまだ封鎖されているが道はすっかり渇いていた。
五分ほど歩いて周りに人の気配が無いようなので、犬達をリードから放して自由にさせると、二匹は矢のようにぴゅうとどこかへ走り去ってしまった。

黒くゴツゴツとした焼き走り熔岩流跡に着くと、木々の何処からかキツツキが木を叩く音が鳴り響いた。
青空に佇むまだ白い雪が残る岩手山を見ていると、石川啄木の一握の砂の一節が頭に浮かんだ。

ふるさとの山に向かひて言ふことなし
ふさとの山はありがたきかな

ゴールデンレトリバーのチャッピーとボーダーコリーのココは満足げに僕を見上げてニコニコと笑っていた。

＃ゴールデンレトリバー＃ボーダーコリー＃